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文化としてのバル

最もスペインらしいものとは何でしょうか。
もしかしたら、バルの風景かもしれません。
それほど彼の地では、バルは生活に密着した存在です。
無くてはならない空間になっています。

店によって早朝から営業しているところもあれば、昼前くらいからというところもありますが、どんなに小さな村に行っても、必ずあるのがバルです。
飲み物を一杯注文するとその店自慢のピンチョスが無料で付いてくるところもあります。
日本語の発音で「パン、パン」と繰り返せば、パンも無料で出してくれるところが殆どです。

このピンチョスがかなりの量で、日本の感覚だと「一杯の飲み物を注文するだけで、一食分になってしまう」ということもよく言われていることですね。
コーヒー類やちょっとした料理も沢山あり、いつでも常連客で溢れている場所、と言えるでしょうか。
人によっては、日に複数回、通う場所でもあります。
一杯の地元の赤ワインと一本の羊肉の串焼きを目の前にした酒飲みが、世界で最も幸福な人間に見えます。

スペインに限らず欧州のラテン語系統の国々では、同じ店の中でも「立ったまま」と「テーブルにつく」では、同じものを注文しても料金が全く異なります。
これは文化の違いを大いに感じる点ですね。
大抵は店の奥にテーブル席が用意され、入り口に近いほど立ち飲みスペースになっています。
そして、スペインのその立ち飲みスペースでは、使った紙ナプキンやゴミ等を床に投げ捨てる、という習慣もあります。
深夜の時間帯には、足のくるぶしのあたりまでゴミで埋まっていることもごく普通の光景です。
極端に清潔さを重視する日本とは、全く異なる感覚ですね。

自宅と職場、学校以外の重要な生活空間のことを、社会学の用語で「サードプレイス」と呼びますが、スペインにおけるバルは、正にこの「サードプレイス」の役目を果たしています。
日々慌ただしく時間の流れる生活をしていると、このバルの存在が、時々無性に羨ましくなる瞬間があります。
彼の地に飛んでいきたくなります。

人々がスペインを旅する目的や方法は、それこそ無数にあると思います。
でも我々酒飲みにとっては、様々な土地のバルを巡り、その土地のワインを楽しむという旅、スペインを知るには、そんな旅こそが相応しいのかもしれません。

今夜、スペインワインを抜栓する瞬間、心だけはもうスペインに辿り着いているはずです。

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