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スペインワインの個性とは?

「レアル」という名称が付いたサッカーチームが、スペインには幾つかあります。
これは、「(スペインの)王室の」という意味で、王室に認可されたスポーツクラブ、といったニュアンスがあります。

一方で、例えばバルセロナ、或いはビルバオというチームには、この「レアル」という名称は付いていません。
これにはスペインの歴史的な地域対立や中央による地方への圧政等、様々な要因が絡んで、現在に至った結果です。

レアル・マドリードとバルセロナ

バルセロナのチーム創立には、当初からスイス人やイングランド人が関わっていました。
「外に開かれたチーム」と言えるかもしれません。
逆にビルバオでは、バスク人(バスク生まれ、またはバスク育ちの人間)だけがプレーします。
ここにはフランス側のバスク地域の人間も含まれます。
国籍はフランス、でも自らのアイデンティティーの拠り所はバスク、という感じでしょうか。
スペイン人であっても、他の地域の人間は、このチームではプレーできないのです。

 こういった経緯もあり、長い間、スペイン代表よりも各地域の代表の方が遥かに強い、カタルーニャ代表やバスク代表の方にこそ人々は熱狂する、と言われてきました。

アスレティックビルバオ

スペインワインも地域による個性がある

サッカーというスポーツ一つを見てもこのように多様なスペインでは、もちろんワインにおいても、
実に多様なものが生み出されています。

スペイン固有のぶどうを使ったものから、例えばフランス由来のぶどうを使ったもの。
伝統的な木樽から、現代的なステンレスタンク、或いはわざわざ原初的な素焼きの甕を用いて熟成させたもの。
各地域で全く異なる気候や土壌という条件の下、醸造家達が自らの哲学と誇りをもって世に送り出すワイン。
そんな営みが、スペインでは何世代にも渡って受け継がれてきました。

スペインを代表する黒ぶどうに、テンプラニーリョがあります。
このぶどうは、地域によってその呼び名が変わります。
センシベルと呼ばれたり、ティンタ・デ・トロと呼ばれたりもします。
他の地域の呼び名に合わせたり、ましてや中央政府の意向に同調したりもしません。
なぜなら、自分達こそがスペイン最高のワインを醸造している、と考えているからです。

ワインに限らず酒の個性とは、その土地の個性に他なりません。
それはワインで言う、テロワールだけではなく、それに携わる多くの人々の情熱や歴史が、途轍もない時間をかけて生み出してきたものです。

今、目の前に、一本のスペインワインのボトルがあるとします。
赤でも白でもロゼでも、もちろん、カヴァでも構いません。
そのワインは、どのようなぶどうで作られたのでしょうか。
そして、そのぶどうは、どのような土壌で育てられたのでしょうか。
ぶどう農家の苦闘や醸造家の苦悩もあったはずです。
長距離の輸送に耐え、多くの人間の手から手を渡って、酒飲みの私達の眼前に辿り着いたのです。

抜栓する時、或いはグラスにワインを注ぐ時、ほんの僅かでもそんな事を想像することができれば、もしかしたら、同じワインをスペイン本国で飲む時以上の感動や幸福感をも味わえるのかもしれません。

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